【③地元の歯科検診で不安に…編】娘の結婚式のために地元の歯科医院に通院しているが、何も進んでいない。(40代女性)
1ヵ月後に控えた娘の結婚式までにどうにかしたい
【患者さんの情報・ご希望等】
- 抜けた歯もあり、1年前から、子ども(娘)の結婚式に間に合わせることを希望して、地元の大きな歯科医院に通院しているが、治療らしい治療は全くしてくれない
- 結婚式が近づいているが、前歯のブリッジも外れてしまい、このままでは結婚式に出られない
- 結婚式まで1ヵ月しかない
- 通院に3時間かかるが、急いで何とかしてほしい
※この患者さんの治療は、段階を踏んで行ったため、以下の3つに分けて詳細を掲載しています。
【緊急対応編】詳細はこちら>>
【義歯治療編】詳細はこちら>>
【地元の歯科検診で不安に…編】※本ページ掲載
【地元の歯科検診で不安に…編】
治療後、問題なく生活していたのに、地元の歯科検診の指摘で不安が・・・
磁石装置を使った義歯も快適で、治療後に定期健診に通いながら、なんの問題もなく生活されていた患者さんですが、住んでいる市の歯科検診を久しぶりに受けたことで、ちょっとした問題が起きました。
「歯科検診で指摘されたら、まず、信頼できる主治医に相談をしましょう」※これが重要です
改めて、申し上げます。歯科検診はとても大事なものです。決して否定していません。
特に、費用の負担なく(少なく)受けることができる自治体の歯科検診で、早めの不具合を確認でき、早めの治療につなげることができる恩恵は素晴らしいものです。
多くの方のお口の健康の維持のために、推奨されるべき仕組みです。
ですが、歯科医師の(おそらく悪気の無い)ちょっとした発言で、この患者さんは不安になってしまいました。ここでは、この患者さんを例に、検診時に指摘されたときに、心にとめておいたほうが良い点を少しお話します。
患者さんは、治療を終えて、噛むことも、話すことも、見た目も何の問題もなく過ごされていましたが、ある日のメンテナンスの時、不安そうに話しだしました。
「私の入れ歯って、左が下がっていておかしいですか?治したほうが良いと、地元の検診の時に指摘されたんです。」と。
少し前、患者さんの住んでいる市から歯科検診の案内が届き、近くの歯科医院に行ったところ、歯周病や虫歯の問題はなかったものの、「上の義歯の見た目が、左下がりになっている。治した方が良い」と、指摘をされたそうです。
患者さん自身は、歯並びも確認もしましたし、今まで全く気にしたこともなかったのに、初めて診てもらった歯科医師に思いがけない指摘をされて、急に不安になったそうです。
しかし、検診の指摘のように、本当に義歯の歯が左に下がっているのでしょうか?
この患者さんの写真でも、特に左(向かって右)が下がって不自然だという状態ではありません。
唇の開き方「スマイルライン」にもできるだけ沿わせた自然な歯並びになっています。むしろ、左の方が、やや上がり気味とも言えるくらいです。
両目を結ぶラインと歯の噛み合わせの平面を、できるだけ平行にすると自然に見えやすいため、私たちは患者さんの写真から計測を行って、歯並びを決めていきます。
こちらの写真でも確認できるよう、患者さんの目のラインと噛み合わせの平面はほぼ平行になっています。
この患者さんは、撮影の時から顔を斜めに傾ける傾向があったため、検診された歯科医師は「左が下がっている」思われたのかもしれません。
患者さんには鏡を持って見ていただいて、左は下がっていないことを確認してもらい、安心していただきましたが、患者さんは「治さなくちゃならないと思って慌てました。こちらに来て相談してよかった。」と、言っていました。
私たちは、患者さんと話をするとき、自分が専門性の高い職業人であることを自覚して、発言が患者さんに及ぼす影響を心にとめて、責任ある発言をするべきだと、いつも思っています。
特に、前の歯科医師の治療についての相談を受けるときには、「前の歯科医師が治す時の状態や治療の進め方、苦労した点を何も知らない」私たちが治療について、あら捜しをするようなことは患者さんの不安や不信をいたずらに大きくするだけですので、決してやってはいけないことだと思っています。
今回も、歯科医師の(悪気はないのだと思いますが)不用意な発言が、患者さんを不安にさせてしまいました。無責任な発言により、しなくても良い治療をしなければならないと思わせて、やる必要のない治療をしてしまう場合も出てくるかもしれません。
歯は削ってしまうと元に戻せません、抜いてしまった歯も元には戻せません。逆に、使えなくなった歯をいつまでも抜かず、そのままにしておくことで治療が難しくなってしまう場合もあります。
とにかく、治療をするかどうか、今の時点で本当に必要な治療なのかどうか、提案された治療のリスクや他の方法との違いはどうなのか、治療を始める前に歯科医師によく聞いて検討してください。
いくつかの歯科医院に相談に行くことも良いと思きます。相談に来る患者さんにいつも言っていることですが、改めて大切なことだと気づかされた事案でした。